アフリカの地方ではソーラー電化が進んでいますが、一番のネックになっていると感じるのが、バッテリーとインバーターの問題です。
現地の人々が工夫しながら機器を使う姿から、本当に求められている電源の形が見えてきました
そのニーズに応えるため、辻プラスチックは「バッテリースルー技術」を開発し、新しい解決策に取り組んでいます。
はじめに:まだまだ続く「電気のない暮らし」
アフリカの農村部の中には、今も多くの人々が電気にアクセスできないまま生活しています。
夜は暗闇の中で長時間過ごし、子どもたちは十分に勉強する時間も取れません。
この現実を変える鍵として、太陽光発電(ソーラー)が期待されています。
幸いにもアフリカは、一年を通して安定した日照に恵まれています。
つまり、太陽光エネルギーを活用する条件は整っているのです。
それでも、なぜソーラーは思うように広がらないのでしょうか。
課題1:バッテリーとインバーターという「見えない壁」
アフリカの無電化地域でソーラーが思うように普及しない最大の理由は、
バッテリーとインバーターの問題にあると考えています。
地方では、信頼できるインバーターがほとんど手に入りません。
都市部には耐久性の高いインバーターもありますが、価格が高すぎて農村では現実的ではありません。

また、DC製品をバッテリーに直接つないで運用すると、
バッテリーの電圧管理ができず、寿命を大幅に縮めてしまうという問題があります。
バッテリーは安くなく、収入水準を考えると頻繁な交換は大きな負担です。
つまり、
- 耐久性の高い手頃なインバーターが手に入らない
- バッテリーを長持ちさせる仕組みがない
この2つが、ソーラー普及を阻む「見えない壁」になっているのです。
課題2:地域住民の対応とその限界
こうした中で、地域住民は自分たちなりに工夫していることをウガンダでの調査で確認することが出来ました。
もっとも多いのが、DC(直流)機器をバッテリーに直接接続して使う方法です。
地方でも広がるDC製品
冷蔵庫、扇風機、テレビ、照明など、多くのDC製品が地方でも手に入るようになってきています。
携帯電話やタブレットの充電には、現地でも購入可能なシガーソケット型のDC充電器もあり、しかも高速充電に対応しているものあります。
最貧国のニジェールや南スーダンでもDC製品の販売が確認されています。

電圧管理の課題
しかしバッテリーへの直接接続では、電圧管理ができないため、バッテリーの劣化が早まるという問題があります。
鉛電池は12Vを下回る状態が続くと寿命が縮み、10.5V以下では回復が難しくなってしまいます。
これは、地域住民が求める「シンプルで安価な電化」の裏に潜む大きなリスクとなっています。
現地の実情:ウガンダ地方での実証事業から
私たちは現在、ウガンダの地方で実証事業を行っています。
そこでは、冷凍庫などのDC製品が地方の販売店でも一般的に販売されており、
小規模事業者は、より良いサービスを提供するために導入を進めています。
人気が高いのは、テレビや冷凍庫など生活の質を高める機器。
また充電サービスでは、高速充電に対応している店舗が特に人気のようです。
この状況から分かるのは、
普及している発電量の小さい100W以下のソーラーシステムでは需要に対応しきれないということ。
人々は「より多くの電力を効率よく使える仕組み」を求めています。


弊社の解決策:バッテリーをいたわるバッテリースルー技術
私たちは、アフリカでの導入実績や現地調査を通じて、
既存のソーラー機器の組み合わせでは、電力ロスの低減・バッテリー保護・安定出力の両立が難しいという課題に直面しました。
この課題を解決するために開発したのが、
現在南スーダンなどで実際に市場投入されている「バッテリースルー技術」搭載のソーラーシステムです。
このシステムは、エコでありながら非常にパワフルです。
12V系システムでも、最大480Wまでのソーラーパネルを積載可能。
これは、一般的に販売店で見かけるソーラー充電コントローラーの約3倍の容量に対応しており、
小規模店舗で冷凍庫・テレビなどを同時に動かすような用途にも十分な電力を供給できます。
特長とメリット
- バッテリー接続無しでも運用できる。(バッテリーの寿命がきても昼間なら運用できる)
- DC駆動に対応している。
- バッテリースルー技術により、発電電力を直接機器へ供給
- 同時にバッテリー電圧を監視・制御し、最適な充電を実施
- 夜間や曇天時は、自動的にバッテリーから給電(バッテリー接続時の場合)
持続可能な電化への道
アフリカの地方でソーラーを普及させるためには、
単に機器を提供するだけでなく、現地の人々がどのように使っているのかを理解することが欠かせません。
現場から見えてきたのは、
「できるだけシンプルで、壊れにくく、長く使えるシステム」が求められているということ。
私たちのハイブリッド式ソーラーシステムは、
こうした声に応え、現地の暮らしに寄り添う“次世代のオフグリッド電化技術”です。
太陽の光を、無駄なく、やさしく、そして長く活かす。
その未来を、地域の人々とともに築いていきたいです。
