2025年春、ゴールドマン・サックスが発表したレポートでは、LMEアルミ価格が2025年第3四半期に平均2,000ドル/トンまで下落し、その後2,300ドルまで反発するというシナリオが示されました。
世界的な需要鈍化と供給過剰の見通しを背景に、市場関係者の間でも「いよいよ価格が崩れるのでは」との声が広がっていた時期です。
…しかし、いざふたを開けてみると、状況はちょっと残念。

想定よりも強い!6月末のアルミ価格
2025年6月末現在、LME(ロンドン金属取引所)でのアルミ価格は2,580〜2,600ドル/トンと、ゴールドマン・サックスが想定していた「2,000ドル割れ」には至らず、むしろ堅調に推移しています。
LME倉庫の在庫量は第1四半期以降に増加し、第2四半期末には約107万トンという高水準に達しているものの、残念ながら需給バランスが崩れるような兆候は見られていません。
7月の見通し修正──ゴールドマンもやや強気に?
2025年7月、ゴールドマン・サックスはこの見通しを修正し、以下のように発表しました
- 2025年下半期:2,280ドル/トンが平均値
- 2026年初には最低でも2,100ドル
- 2027年末には2,500ドルまでの回復を想定
つまり、「大幅下落」は後退し、むしろ安定的な価格帯が見込まれているというわけです。(アカンやん)
日本国内のアルミ価格は?
LME価格の安定は、日本国内のアルミ価格にも影響しています。
- 2025年6月の平均地金価格:448.9円/kg
- 2025年7〜9月のNSP(ノンストッププロファイル材価格):460円/kg
3ヶ月平均(4月:427.7円、5月:439.3円、6月:448.9円)をもとにNSPが算出されており、国内でも価格は上昇基調にあります。
それでも急落可能性はゼロじゃない
一見すると安定しているように見える市場ですが、油断は禁物。
- 夏以降は建設や製造業の季節的な需要減少
- 中国経済の失速懸念(特に不動産やインフラ関連)
- 欧米の景気後退や利下げの遅れ
これらの要因が複合的に作用すれば、再び価格が大きく崩れる可能性も残っています。
トランプ政権の関税が生むゆがみ
2025年6月、再選されたトランプ政権は、中国製アルミ製品に対して最大50%の関税を発動しました。
この措置により
- 米国市場ではプレミアム価格が急上昇
- 中国アルミが他国市場に流入し、供給偏在が進行
- 価格の地域差とボラティリティ(変動性)が拡大
国際市場は、ますます読みにくい展開を見せつつあります。
為替もカギ!ドル円135円になれば…
NSPを下げるには、LME価格だけでなく、為替の動きも大きなカギになります。
現在の為替はおおむね1ドル=145円前後。ここから135円へ円高が進めば、同じLME価格でも円換算値が大きく下がります。
たとえば
平均3ヶ月でこの水準が続けば、NSPは430円/kg程度に下がる可能性
LME価格が2,600ドル/トンで固定されたままでも、135円/ドルで計算すれば → 351円/kg
プレミアム(輸送費や在庫コスト等)を加えても → 約421円/kg(えー感じやん)
もうひと押し!担当者の願いはNSP400円/kg以下
ここまで市況を真面目に解説してきましたが、
製造業は、やっぱりこう思ってしまいます。NSP、400円/kgを切ってほしい!!
NSPが400円/kgを下回るには
- LME価格がさらに下がる(例:2,300ドル/トン)
- ドル円が135円以下になる
この2つが重なれば、NSP400円/kgも夢ではありません。
まとめ
- ゴールドマンの「2,000ドル割れ」予測は後退
- LME価格は6月末時点で2,600ドル前後と堅調
- 国内NSPは460円/kgと高止まり継続中
- 下落リスクは依然あり:季節要因+景気後退
- トランプ政権の関税が市場を複雑に
- そして私は…NSP400円&ドル円135円を祈っている
市場を冷静に見つめつつ、心の中では思わず叫んでしまいます。
「アルミ価格よ、もっと下がれーー!!」