辻プラスチック株式会社は、これまでアフリカ各地で事業を展開してきましたが、新たに「ウガンダ」での取り組みを本格化させます。これから数回にわたって、私たちがウガンダでどんな課題と向き合い、どんな解決策を提供していこうとしているのかをご紹介していきます。
まずは第1回。そもそも、ウガンダってどんな国なのでしょうか?
東アフリカの内陸国、ウガンダ
ウガンダは、東アフリカに位置する内陸国で、2023年時点の人口は約4,800万人。豊かな自然に囲まれ、「アフリカの真珠」と呼ばれることもある、美しい国です。
首都はカンパラ。公用語は英語とスワヒリ語で、若い世代の割合が高いのが特徴です。国民の約8割が農村部で暮らしていて、農業が主な産業となっています。
経済面では、コロナ禍からの回復が進み、2023年の経済成長率は約5.3%。サブサハラ・アフリカの中でも比較的高い水準で、都市部では経済活動が活発になっています。
ただし、一人あたりのGDPで見ると、地域内では中下位グループにあたる位置づけで、まだ豊かな国とは言いにくいのが現実です。周辺のケニアやルワンダ、タンザニアと比べても国民の平均所得はやや低めで、特に地方では自給自足に近い生活をしている人も少なくありません。
それでも、教育への関心は高く、若者たちの意欲や成長へのエネルギーはとても強いと感じます。今後の発展に向けては、インフラや産業基盤の整備、そして都市と地方の格差是正が大きな鍵になりそうです。
なぜ地方に電気が届かないのか?そして今、求められているもの
ウガンダは都市部の電化が進んでおり、首都カンパラではほぼ100%の電化が実現しています。家庭やビジネスで電力が使える環境は整っていますが、私たちが2020年に訪れた際には、街灯が少なく、夜は意外と暗いという印象を受けました。隣国タンザニアの都市・ダルエスサラームと比べると、数字に現れない課題があると感じたのを覚えています。
そして、地方に目を向けると、状況はさらに深刻です。全国平均の電化率は約51.5%ですが、地方では20%未満の地域も多く、多くの人々が今も電気のない生活を送っています。電気がなければ、夜間の勉強、医療機器の使用、食品の保存や農作物の加工ができず、暮らしや経済活動が大きく制限されます。
その背景には、ウガンダの電力の約8割が水力発電に依存していることがあります。自然環境に左右されやすく、安定供給が難しいうえに、急増する人口に対してインフラ整備が追いついていないという現実もあります。とくに地方では、国家送電網が届いていない地域も数多くあります。
こうした中で注目されているのが、分散型・独立型の再生可能エネルギーです。ウガンダは年間を通じて安定した太陽光に恵まれており、太陽光発電に非常に適した国です。インフラに頼らず、地域主導で持続的に使える太陽光システムは、電力格差を埋める手段として、大きな期待が寄せられています。
日本とアフリカをつなぐ「ABEイニシアティブ制度」
私たちがウガンダでの活動を進めるうえで、重要な出会いをもたらしてくれたのが、JICAが実施する「ABEイニシアティブ制度(African Business Education Initiative for Youth)」です。
この制度は、アフリカの若者を対象に日本の大学や大学院での学びと、企業でのインターンシップ機会を提供するプログラムで、日・アフリカ間の経済連携を促進することを目的としています。
私たちのウガンダ人ビジネスパートナー
現在、私たちがウガンダで一緒に活動しているビジネスパートナーも、この制度を活用して日本に留学してきました。彼は日本の大学院を修了後、当社で長期間の技術移転研修を受け、正式にビジネスパートナーとして認定されました。
彼自身、地方における深刻な電化の遅れを日々肌で感じてきました。その経験から、地域間格差の是正に強い問題意識を持ち、ウガンダの未来のために力を尽くしたいという思いで、私たちと手を組んでくれています。今後、彼とともに、現地の人々の暮らしに本当に役立つ事業を、一歩一歩、丁寧に形にしていきたいと考えています。

現場に足を運び、未来のニーズを見据える
私たちには、ウガンダに信頼できるビジネスパートナーがいます。彼は現地で活動しており、都市部の状況には詳しいのですが、地方の実情は実際に足を運んでみないと分からないことが多いのが現実です。
これまでの経験から言えるのは、農村部に住む人々はたしかに収入が低いものの、テレビや扇風機といった家電製品を欲しがっている人が少なくないということです。インフラは整っていなくても、「もっと便利な暮らしがしたい」という思いは強く感じられます。
だからこそ、今ある需要――たとえばスマホの充電など――だけに目を向けるのではなく、数年先に広がっていくであろう生活の変化やニーズも見据えながら、私たちは現地での事業に取り組んでいきたいと考えています。
現場を見て、声を聞き、将来の姿を想像しながら、地域に本当に必要とされる技術と仕組みを届けていく。それが、私たちの目指す事業のかたちです。