期待ハズレのアルミ相場 ― 下がると思ったら、まさかの踏ん張り!

春先にゴールドマン・サックスが「アルミ価格はQ3に平均2,000ドル/トンまで下がる」と弱気な予測を出していました。こちらとしては“よっしゃ、安くなる!”と期待していたんですが、残念ながら… 実際の足元(9月1日時点)ではLME 3Mは約2,615ドル/トンで推移しており、想定されたほどの下落は起きていません

目次

その後の流れ

  • 6月:ゴールドマン自身も見通しを上方修正し、下半期平均2,280ドル/トンと修正。
  • 7〜8月実勢:2,580〜2,660ドル/トンのレンジで安定。
  • 背景
    • LME在庫は低水準で、逼迫感が続いている
    • 中国は輸入を増やし、7月も前年比38%増
    • 米国のアルミ関税(50%)をめぐる政策不透明感が残る

中国の生産制限と価格への影響

アルミ価格を左右する最大要因のひとつが、中国の動きです。

  • 中国は世界アルミ生産の6割を占める一大拠点。
  • 近年は 電力消費抑制や環境規制 の強化により、新規の製錬所増設が制限され、既存設備にも稼働上限が設けられています。
  • 2025年夏以降も、内モンゴルや雲南など水力依存地域での 電力不足や干ばつリスク が生産を圧迫。

このため、需給全体で見れば「供給増による価格下落」が起こりにくく、相場の下値を支える要因になっています。実際、ゴールドマンの予測(2,000$/t割れ)が外れた背景にも、中国の供給制限が大きく影響しています。

今後のレンジ見通し(9〜12月)と年始の予測

  • 2025年9〜12月(年内)
    • 足元(7〜9月)は 2,580〜2,660$/t で安定。
    • 年内もこの水準をベースに、需給バランスと為替要因で上下。
    • ベースケース:2,550〜2,700$/t
    • 下振れリスク:米関税の緩和や中国需要の鈍化で2,450$/t近辺
    • 上振れリスク:中国の生産制限や輸入増が続けば2,750$/t台へ
  • 2026年1〜3月(年始)
    • ゴールドマンは2,280〜2,300$/tを示唆しているが、実勢との乖離が大きい。
    • 現実的には、需給逼迫が続けば2,500〜2,650$/tレンジでの推移が濃厚。
    • 為替が円高(140円)に振れた場合:NSPは 450円/kg台 まで低下の可能性。
    • 為替が円安(150円)に振れた場合:NSPは 480円/kg近辺 の高止まり。

円建て換算の示唆

  • 直近水準:2,615ドル/トン
    • ドル円=145円 → 約379円/kg
    • ドル円=140円 → 約366円/kg

NSP(新地金価格)の推移と予測

  • 2025年7–9月期:460円/kg
  • 2025年10–12月期:470円/kg(想定)
    → いずれも前年や春先の弱気見通しよりは高止まり。

円高(140円)方向なら年明けに450円/kg台への低下も十分あり得る一方、円安(150円)方向なら480円/kg超の高止まりも考えられます。

為替動向:円安か円高か?

市場では円安・円高の両方の見方がありますが、現時点では円高シナリオの方がやや優勢です。

  • 円高要因
    • 日米金利差の縮小が進み、BOJの追加利上げ観測もある
    • 2025年末には135〜140円/ドルまで円高が進むとの見方(元財務省為替トップの古沢幹宏氏)
    • 政治リスク(FRB人事介入など)でドル不安 → 円買い需要
  • 円安要因
    • 米国が高金利を維持すれば、再び利回り差拡大 → ドル買い優勢
    • 短期的には147〜149円あたりでレンジ推移、149円超もあり得る

総合判断

  • 短期:147円前後での揺れ動きが続きそう
  • 中期(年末〜来年初め):135〜140円へ円高方向に振れる可能性がやや高い(希望的観測含む)

まとめ

  • ゴールドマンの4月予測(2,000$/t)は外れ、実勢はむしろ堅調に 2,600$/t前後 を維持。
  • 中国の生産制限や電力不足が供給を抑え、価格の下支え要因となっている。
  • 年内(9〜12月)は 2,550〜2,700$/t がベースレンジ。下振れしても2,450$/t程度、上振れすれば2,750$/t台。
  • 年始(2026年1〜3月)も、実勢に即すと 2,500〜2,650$/tレンジ での推移が濃厚。
  • 日本のNSPは7–9月期460円/kg → 10–12月期470円/kg。為替次第で年明けは 450〜480円/kg の変動余地。
  • 為替シナリオは短期的に147円前後のレンジも、中期的には135〜140円台の円高方向に振れる可能性がやや優勢。
  • 願わくば年始に450円/kg!その思いで、いまは在庫を最低限にしているところです。
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