前回は、ウガンダの学校に導入した新しいソーラーシステムについてご紹介しました。
今回はその第二弾として、首都カンパラから北にあるナカソンゴラ地区で行った、小規模事業者向けの実証についてお伝えします。
ウガンダってどんな国
ウガンダは東アフリカに位置する内陸国で、国土は日本の約3分の2にあたる 24万km²。人口は約 4,800万人で、その約8割が地方農村部に暮らしています。
首都カンパラなど都市部では電気が使えますが、停電は日常的です。地方ではさらに厳しく、幹線道路沿いに送電線があっても、自宅や店舗に引き込むには自費負担が必要で、多くの人が電気を使えません。
さらに発電の大半を水力発電に依存しているため、乾季や洪水で供給が不安定になりがちです。こうした背景から、農村部ではソーラーシステムのような分散型電源が強く求められています。
実証地域
今回の実証事業の舞台は、首都カンパラから北へ約120kmに位置するナカソンゴラ(Nakasongola)地区です。ここは、私たちが以前にソーラーシステムを導入した学校がある地域よりさらに北にあたり、電化率が低い地域のひとつとして知られています。
事前調査を行ったところ、ナカソンゴラ地区でも人口が比較的多く集まる村落はすでに電化されていることが確認できました。そこで今回は、人口がそれほど多くなく、電力インフラから取り残されている村落をターゲットとしています。


現地を歩いて見えてきたこと
ナカソンゴラ地区の中心部から少し離れた村落を訪ねると、いくつかの小規模店舗があります。これらの店舗にはすでにソーラーシステムが導入されているケースが多く見られましたが、発電容量は50Wや75W程度と小さく、使える電力が少ないことが分かります。

また、DC(直流)製品を使っている店舗が多いのも特徴でした。テレビや冷蔵庫までDCタイプが使われており、これはインバーターの故障率が高く耐久性に乏しいため、あえてインバーターを介さない選択をしているのだと感じました。
さらに印象的だったのは、冷凍庫の使い方です。飲み物を冷やすために昼から夜まで数時間だけ電源を入れ、凍らないように頻繁に切るといった工夫がされていました。裏を返せば、発電容量が小さいために長時間の稼働が難しく、その制約の中で住民は知恵を絞って暮らしているのです。
しかし一方で、この制約は小規模事業者にとって大きな壁でもあります。
- 発電が少ないために、冷蔵庫かテレビか、どちらか一つしか選べない。
- 携帯の充電サービスも2〜3台が限界。
- バッテリー交換が頻繁に必要で、維持コストが高い。
中には75Wのシステムを2台組み合わせている店舗もありましたが、それでも十分ではありません。「電気さえ安定してあれば、もっと幅広いサービスを展開できるのに」という声が多く聞かれました。
革新的なソーラーシステム
今回私たちが提案したのは、最大480Wのソーラーパネルを搭載できる新しいシステムです。
このシステムの特長は大きく三つあります。
まずは、バッテリーに依存しない設計です。バッテリーを接続しなくても駆動できるため、日中であれば発電した電力をそのまま利用できます。
次に、パススルー技術による負担軽減です。バッテリーを接続した場合でも、電力を直接機器に流す仕組みがあるため、バッテリーに余計な負担をかけません。これにより、頻繁な交換という大きな課題を減らすことができます。
そして三つ目が、DC製品との高い相性です。地域で広く普及しているDCテレビやDC冷蔵庫を無理なく接続でき、導入したその日から生活や小規模ビジネスに役立てることができます。
従来の「発電量が小さく、限られた用途しか対応できないシステム」と比べ、この新システムは複数の機器を同時に安心して動かせる、次のステップとなる電源モデルと言えるでしょう。
導入事例
2件の店舗が入る建物にソーラーシステムを導入しました。
Barber(散髪屋)
店内にはバリカンの充電器のほか、テレビや照明がありました。しかし、従来の小さな75Wソーラーシステムでは電力不足のため、テレビは限られた時間しか使えず、携帯の充電も2〜3台が限界でした。
今回、建物の屋根に300Wのソーラーパネルを組み合わせたシステムを設置。必要な電力を余裕をもって供給できるようになっただけでなく、シガーソケット端子を活用して、5台の携帯電話を高速充電できるようにしました。充電機器を購入すれば、更に多くのデバイスの充電が可能です。


飲料水販売店
隣の飲料水販売店にとって、冷たい飲み物は「売上を伸ばす鍵」です。Barberの改善を目の当たりにした店主は、いても立ってもいられず、慌てて地区の中心部まで冷凍庫を買いに走りました。
この建物にはBarberと飲み物販売店の2店舗が入居しており、当初はBarberの電力改善を目的に300Wのソーラーシステムを導入していました。しかし、隣の飲み物販売店の依頼により冷凍庫を動かす必要が出てきたため、300Wでは不安が残る状況に。そこでソーラーパネルを450Wへ拡張し、冷蔵庫を安定して稼働できるようにしました。


別の飲料水販売店のケース
別の村落にある飲料水販売店では、すでに冷凍庫を導入し、冷えた飲み物を提供していました。しかし、冷凍庫の設定を強くすると電気が持たず、十分に活用できないという問題がありました。さらに、この店でも充電サービスの需要が高いにもかかわらず、電力不足のために実施できない課題を抱えていました。
そこで、この店舗には私たちの制御システムに300Wのソーラーパネルを組み合わせた仕様を設置しました。これにより、冷凍庫を「強いモード」で稼働させながら、10台の機器を同時に高速充電できる体制を整えました。





まとめ
携帯電話などのデバイスの充電サービスは、依然として需要があります。ですが、求められているのは単なる充電ではなく、高速充電に加えて、テレビや音楽を楽しめる環境、そして冷えた飲み物を提供できる冷蔵庫などを同時に動かせるサービスに移行しているように感じ取れました。
こうしたニーズに応えられるシステムが広がれば、小規模事業者は新しいサービスを展開でき、地域の暮らしもさらに豊かになります。私たちの新しいソーラーシステムは、その実現を支える大きな力になると信じています。