前編では、地下水の変化という現実と、
Lake Kyoga 湖岸の村が抱える水課題についてお伝えしました。
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そして後編。
いよいよ、日本の技術を持ち込み、実際に動かす現場編です。
ピンチ!建物が借りられない
借りる予定だった建物が、直前になって使えないことが判明。
……え?
いやいや、今それ言う?
でも、立ち止まってる時間はありません。―建てよう!。ウガンダの小屋は、レンガとセメントのシンプルな造り。だからこそ動き出したら早い。レンガを積む音、セメントを叩く音が響く中、こちらも負けじと動きます。
ソーラーパネルの準備、タンクの設置、水浄化機器の仮組み。全部、同時進行。
正直、余裕なんてゼロ。
でも、この無茶な並行作業ができたのは、日本で長期間技術研修を受けたビジネスパートナーがいたからこそ。機械の中身も、電気の流れも、水の動きも、ちゃんと分かっている。だから「どうしますか?」ではなく、「次これやります」で動ける。
これ、めちゃくちゃ大きい。
技術は機械の中にあるんやなくて、人の中にある。それを実感した瞬間でした。



湖水の現実
原水は Lake Kyoga の湖水。
汲み上げてタンクに入れると、はっきりと分かる濁り。透明とは程遠い状態です。


住民はこの水をどう処理しているのか。
正直、何かしらの薬品処理や簡易ろ過をしているのではないかと想像していました。
というのも、セネガルで活動した際には、住民が凝集剤を使って濁りを沈殿させる工夫をしていたからです。だからウガンダでも、何かしらの処理をしているのではないかと思っていました。
しかし実際は―
煮沸のみ。それだけでした。しかも、薪で。


濁りを取る工程はありません。薪を集め、火を起こし、ただ煮沸する。安全度が十分でない水を使い続けるには、大きな負担が伴います。
近年、ウガンダでは水が原因とされる下痢性疾患が多くの地域で急増しています。
地下水の汚染や塩化が進み、これまでのように井戸水に頼れなくなってきている地域が増えていると考えられます。
水が変わった瞬間
小屋はまだ工事中。
レンガ壁は乾ききっていない。屋根の仕上げも続いている。それでも、浄水システムの組立を始めなければ間に合いません。小屋の工事を進めながら、外で浄水システムのセットアップを始める。
すると、もう子どもたちが集まってくる。いやいや、営業は明日からですよ……と言いたくなるくらい、工事中にも関わらず、ポリタンクを持って並び始める。

機器のセットアップが終わり、浄化水が蛇口から出た瞬間!明らかに違う水の透明度を見て、子供たちは、その場でいきなり飲み始める。分かるのかな、これが安全であることが・・


なぜソーラーなのか
この地域は最近電化されました。
しかし停電が多く、長いときは2〜3日止まることもあるようです。
それでは命に直結する水は止まる。だから、私たちはソーラーで運用することにしました。
このシステムは、
・バッテリー接続不要のパススルー技術を搭載
・たった600〜700W程度の太陽光で運用可能
周辺には、いまだ電化されていない地域もあります。さらに地下水が塩化して使えなくなっている村も少なくありません。こうした現実を考えると、今回の導入はこの村だけで終わる話ではないと感じました。
そこで私たちは、将来の展開も見据え、最初から完全なオフグリッド設計にしています。電力網に頼らず、太陽光だけで運用できる仕組みです。
停電があっても、未電化地域であっても、水は止まらない。それこそが、命に直結するインフラだと考えています。
行列ができた朝
翌朝、村に到着したら建物は無事に完成しているのを見て、まずは、ほっと。本当に間に合うのか、内心ずっと気になっていたからです。しかし、それ以上に驚いたのは、建物の前にすでに人が集まっていたことでした。
まだ正式な供給開始前にもかかわらず、ポリタンクを抱えた子どもたちが列をつくっていたのです。静かに順番を待つその姿から、「この水を待っていた」という気持ちが伝わってきました。
前日に透明な水が流れ出る瞬間を見ていた子どもたち。その記憶が、翌朝の行動につながっていたのだと思います。
安全な水がある。
それだけで、こんなにも空気が変わるのか。
その光景を目の前にして、このプロジェクトを実現できてよかったと、心から感じました。

日本の技術が支えているもの
今回導入したシステムには、日本で長年培われてきた技術が活かされています。
お話した通り、電源にはバッテリー接続に依存しないパススルー技術を搭載したソーラーシステムを採用しました。日中の発電を効率よく活用できるため、停電の多い地域でも安定した運用が可能になります。
水浄化の要となるのは、日本の中空糸膜技術です。
この膜は濁りを取り除くだけでなく、大腸菌などの下痢性疾患の原因菌を物理的に除去できます。見た目を透明にするだけではなく、衛生面でも大きく改善された安全な水へと変える仕組みです。
さらに、この機器には膜を洗浄する機能が備わっています。定期的に逆洗を行うことで目詰まりを抑え、長期間にわたって安定した性能を維持できる設計になっています。
頻繁な膜交換を前提としないことは、維持管理が限られる地域では特に重要です。技術は、高性能であるだけでなく、続けられることが意味を持ちます。
今回、在ウガンダ日本大使館大使に視察いただき、この仕組みを説明させて頂きました。


しかし最も印象に残ったのは、技術そのものではありません。
安全な水を手にした子どもたちの笑顔でした。
どれほど優れた技術であっても、最終的に守りたいのは、あの表情なのだと改めて感じました。
これは始まりにすぎない
今回の導入は、ひとつの村での取り組みにすぎません。同じ課題を抱える地域はこの周辺にいくつもあり、既に全土に広がっています。
- 地下水が塩化して使えなくなった村
- 汚染が進んだ井戸に頼るしかない村(汚染に気づいていない)
水の問題は、単なる不便さの話ではない。健康にも、教育にも、そして未来にも直結しています。
井戸を掘れば解決するという時代は、少しずつ変わりつつあるように感じます。
ウガンダでは、これまで多くの先進国からの支援もあり、各地にハンドポンプ式の井戸が設置されてきました。実際、村々を回ると至るところにその姿を見ることができます。
もちろん、故障したまま使われていないポンプが多いことが、一番大きな問題。しかしそれだけではない。たとえ動いていたとしても、その水質が変わりつつあるという現実にも、目を向ける時期に来ているのかもしれない。
井戸があることと、安全な水があることは、必ずしも同じではない。
だからこそ、これからの水インフラは「量」だけでなく、「質」も問われる時代に入っているかもしれない。
今回のプロジェクトは、その第一歩。
まだ小さな一歩かもしれないけど、水が変わった瞬間の、あの空気は本物でした。




