南スーダンに灯った明かりの物語。  第2回:ソーラーを触ったこともなかった若者が、地域を支えるまで

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明かりのそばにいた、現地パートナー

前回の記事では、南スーダンの地方に灯った小さな明かりの物語を記しました。理容店では、夕方以降もお客様を迎えられるようになり、充電サービス事業者は夜まで営業を続けられるようになりました。クリニックには人を迎えるための明かりが灯り、ある家庭では、外灯の下で子どもが勉強する姿がありました。

どれも、南スーダンの地方で実際に生まれた小さな変化です。しかし、その変化は、ただソーラーシステムを設置しただけで生まれたものではありません。

電気がない地域でソーラーシステムを導入することは、決して簡単ではありません。どれくらいの電気が必要なのか。どの時間帯に多く使うのか。今ある設備を活かせるのか。バッテリーに無理をかけず、長く使い続けるにはどうすればよいのか。現場によって答えは一つひとつ違います。

だからこそ、製品を届けるだけでは、明かりは本当の意味では灯りません。現場を見て、使う人の話を聞き、その人の仕事や暮らしに合った形を考える人が必要になります。設置した後も、きちんと使えているかを確認し、問題があれば原因を探し、改善していく人が必要です。

南スーダンの地方で灯った明かりのそばには、いつもその役割を担う人がいました。私たちの現地ビジネスパートナーです。

彼は、最初からソーラーシステムの専門家だったわけではありません。日本に来た当初、ソーラーシステムを本格的に触ったこともありませんでした。それでも、辻プラスチック社で技術を学び、南スーダンに戻り、一つひとつの現場に向き合いながら、地域で信頼される事業者へと成長していきました。

今回は、南スーダンに灯った明かりのそばで、現地の人々と向き合い続けてきた一人の若者のお話です。

はじまりは、日本での技術移転

彼は、元ABEイニシアティブ生として日本に来る前から、辻プラスチック社とコンタクトを取っていました。ソーラーシステムを学びたいこと、そして自国の電気事情を少しでも改善したいことを、私たちに話してくれていました。

南スーダンでは、電気を使えない地域が数多くあります。日が沈めば長い暗闇の時間が始まり、仕事も、暮らしも、学びも大きく制限されます。彼は、その現実をよく知っていました。

自分の国の課題を何とかしたい。
その思いを持って日本に来ました。

しかし、ソーラーシステムに関しては、ほとんど経験のないところからのスタートでした。

研修で大切にしたのは、机の上で知識を覚えることではなく、実際に機器に触れ、配線を確認し、組み立て、動かしながら、仕組みを自分の感覚で理解できるようになることでした。

同じ作業を何度も繰り返す。
その中で、なぜこの配線になるのか、なぜこの機器が必要なのか、どうすれば安定して電気を使い続けられるのかを、一つずつ身体に覚え込ませていきます。

ソーラーシステムを現場で確実に動かし、長く使い続けてもらうためには、仕組みを理解し、自分で確認し、判断できる力が必要になります。

彼が学んだのは、配線や組み立ての技術だけではありません。発電量や消費電力の見方、バッテリーへの負担を減らす考え方、そして現場に合わせて提案する力です。

南スーダンでは、ソーラー電源を必要としている場所は数多くあります。しかし、使い方はそれぞれ違います。理容店、充電サービス、クリニック、家庭、学校、事業所。必要な電気の量も、使う時間帯も、支払える金額も同じではありません。

だからこそ、その人の暮らしや仕事に合った形で提案することが大切になります。

小さな導入から、信頼が広がっていった

南スーダンに帰国した彼は、日本で学んだ技術を自分の国で活かし始めました。最初から大きな資金があったわけではありません。大規模な営業網があったわけでもありません。できることは、ひとつずつ現場に向き合うことでした。

南スーダンでは、ソーラーシステムに対して慎重な人も少なくありません。導入してもすぐに動かなくなる。バッテリー交換が頻繁に必要になる。思っていたよりも費用がかかる。そうした話を見聞きしている人たちにとって、新しくソーラーシステムを導入することは、簡単な決断ではありませんでした。

それでも、毎日夜まで明かりがついている家があると、その情報はすぐに地域へ広がっていきます。

「あの家は、どんなシステムを使っているのか」
「なぜ、夜まで電気が続いているのか」
「誰が設置したのか」

一度導入した事業者の多くは、その後、自宅や親戚の家への設置も依頼してくれるようになりました。そこに明かりが灯ると、今度はその知り合いから別の相談が届くようになる。

一つの明かりが、次の明かりへつながっていく。

そうして、依頼は少しずつ増えていきました。気がつけば、事業を始めて2年も経たないうちに、彼の仕事は南スーダンの人々に必要とされるものになっていた。

丁寧な説明と確実な仕事が、事業を育てた

彼の事業が広がった理由は、技術だけではありません。
お客様に丁寧に説明し、無理に大きなシステムを売るのではなく、必要な電気に合った構成を考える。設置後も相談できる関係をつくり、現場では確実に仕事をする。

その積み重ねが、信頼になっていきました。

ソーラーシステムが本当に評価されるのは、設置した直後ではありません。数か月後、そして一年後です。夜まで明かりが続いているか。バッテリーがすぐに弱っていないか。お客様が安心して使い続けられているか。

結果が見えるまで時間がかかるからこそ、誠実な仕事が大切になります。

南スーダンでの事業は、派手な広告によって広がったわけではありません。夜まで明かりが続くという事実。確実に仕事をしてくれるという安心感。

その二つが、少しずつ事業を育てていったのです。

小さな明かりから、大型システムの依頼へ

やがて、依頼は家庭や小さな店舗だけではなく、国際NGOのような団体からも届くようになりました。
大型ソーラーシステムの導入依頼や相談が、少しずつ増えていったのです。

【写真:導入したソーラーシステム】

国際NGOから依頼を受けた大型ソーラーシステムでは、家庭用や小規模店舗向けとは違い、必要とされる電力量も、設計の難しさも大きくなります。単にパネルを増やせばよいわけではありません。バッテリー容量、使用する機器、日中と夜間の電力の使い方、将来のメンテナンスまで考える必要があります。

南スーダンにも、ソーラーシステムを扱う事業者は数多くあります。
その中で、事業を始めてから2年も経たないうちに、国際NGOや団体から相談が届くようになったことは、彼の仕事が現地で認められ始めている証でもあります。

首都JUBAでの認知度も急速に高まり、大型システムの引き合いも増えてきました。

小さな明かりを灯す仕事から始まり、今ではより多くの人や施設を支えるシステムへ。
南スーダンでの挑戦は、少しずつ大きな仕事へと広がっています。

地域全体を支えるオフグリッドシステムへ

【写真:地域のオフグリッドシステム】

最近では、地域全体を支えるオフグリッドシステムの導入も手掛けるようになりました。
これは、ひとつの家庭や店舗に電気を届けるだけの仕事ではありません。地域の中で、複数の人や施設が電気を使える仕組みをつくっていく仕事です。

かつて、ソーラーシステムを触ったこともなかった一人の若者がいました。
その若者が、今では地域の電力インフラを支える仕事に関わるようになっています。

小さな明かりを届けることから始まった事業が、地域の暮らしを支える仕組みへと広がっていく。
その歩みは、南スーダンで技術移転が確かに根づき始めていることを示しています。

これこそ、私たちがアフリカで大切にしてきた技術移転の形です。

技術移転が、人を育て、地域に残る力になる

辻プラスチック社が目指しているのは、製品を供給することだけではありません。
現地に根づく事業に育てていくためには、現地で説明できる人、設置できる人、不具合があれば確認し、改善できる人、そしてお客様の暮らしや仕事に合わせて提案できる人が必要です。

そうした人材が育ってこそ、技術は現地に残っていきます。

彼は、ソーラーシステムを触ったこともないところから学び始めました。
そして今では、南スーダンでソーラーシステム事業者として認知され、大型案件や地域全体のオフグリッドシステムの相談も受けるようになっています。

これは、一人の若者の成長のお話です。
そして、技術移転が現地で形になっていくお話でもあります。

南スーダンの地方には、まだ電気を必要としている場所が数多くあります。
夜まで営業したい店舗。
地域の人を支えるクリニック。
携帯電話を充電したい人たち。
明かりの下で勉強したい子どもたち。

必要としているのは、ただの機器ではありません。
長く使える仕組みであり、現地で支えてくれる人であり、信頼できる仕事です。

南スーダンで灯った小さな明かりは、少しずつ広がっています。
その明かりの先には、仕事があり、暮らしがあり、子どもたちの学びがあります。

そして、その明かりを現地で支えているのが、かつて日本でソーラーシステムを学び、自分の国で事業として育ててきた一人のパートナーです。

辻プラスチック社は、これからも現地パートナーと共に、南スーダンをはじめとするアフリカの地域で、使い続けられるソーラーの普及に取り組んでいきます。

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